北村太郎(その詩と死)/岡部淳太郎
いると、何やら取り残された者の悲哀を感じる。世界はすべて順調に動いているのだが、自分だけはそれに同調出来ないでいるように見える。単なる独白と風景描写に終始しているようだが、そこには語り手の思いが一種のフィルターのようにかかっている。「街のかたちがふしぎにととのい/信号の明滅が/順調な過去のように見える」のだ。恐らく周囲のすべての幸福がにせもののように見えているのだろう。ここでは詩の言葉の中に隠喩を散りばめるというよりも、ひとつひとつはきわめて平明な表現でありながら、詩全体がひとつの隠喩となっているような構造を持っている。北村太郎の詩を読んで、言葉は易しいんだけど、全体を見ると難しいと感じるのは、詩
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