ことばを捉えようとして 声がこみあげる 息が詰まり たとえばテーブルの瓶が 時間になる 窓のそと シャツがはためき 街のかたちがふしぎにととのい 信号の明滅が 順調な過去のように見える 上膊が硬直し 米噛みがふくれ どこか遠くの部屋で ピアノの蓋が締められる だれ一人いない 夏の海を思い出す そのように 充実した無の感情の 波の くりかえしが 椅子を取りまく地獄である (「怒りの構造」全行)