北村太郎(その詩と死)/岡部淳太郎
 

橋のしたのブロンドのながれ、
すべてはながれ、
われわれの腸に死はながれる。
午前十一時。
雨はきしる車輪のなかに、
車輪のまわる音はしずかな雨のなかに消える。
街に雨はふりやまず、
われわれは重たいガラスのうしろにいて、
横たえた手足をうごかす。

(「雨」全行)}

 詩のすべてが隠喩で出来ているように見える。「窓」と「墓地」の対比。このふたつは、ともに閉ざされて開かない奥まった場所である。その中にいる者は外の世界に出てくることはない。さりげなく置かれた「煉瓦づくりのパン焼き工場から、/われわれの屈辱のためにこげ臭い匂いがながれ、」という二行は、火葬場で死者の遺体を焼
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