ある町の情景/道草次郎
 

この町には地球より大きい時計がある。住人たちは各自思い思いに長針や秒針や歯車のアスレチックで遊んでいる。12時の方向に朝日が昇り、6時の方向に夕陽が沈む。一日一度鳴る鐘の音は祈祷の時間。メッカはどっち。

死ぬ事の練習から毎朝覚め、生き、やがて本番をむかえ全然こんな筈じゃなかったと思いたくないがためにシスターは祈る。荒れ狂う海原を前にして、白猫の頭部にしがみつく少女が着る拘束衣のダボ付き。

蟻の餌食となり間欠的に身をビクつかせる蚓の悶え。この瞬間にも無量大数の凄絶を載せ真空を切り裂くようにメリーゴーランドする青い星は、裏を返せばそうだ、天使の羽根で出来た彗星。町はそういう所に匿われて
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