伐採/山人
と予想された。しかし、倒すべき箇所はそこしかなく、とりあえず作業を開始した。受け口を伐り、追い口を伐り始め、楔を打ち込む。杉の大木はゆらりと傾き動き始める。が、やはり予想通り隣の大きな張り出した木の枝に阻まれて止まった。ただ焦りはなかった。受け口のつる(蝶番となった部分)のストップした側の一部を切り、そこに楔二本を重ねて打ち込んだ。かさかさっと上部の枝は動き、やがてストップをかけていた枝は離れ、つっかえ棒を失った伐倒対象木は観念したように倒れてくれた。倒れた杉はいくつかに玉切り、枝を払い、土になるための化粧をほどこす。うしなわれた命であるが、別な命のために土に還り、養分になるという使命を与えられた
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