不完全に燃焼する罠/こたきひろし
そっと肩を叩かれて慌てて我にかえった。
悪いね。折角休んでいるところ。
長身の男性が黒服に身を包んで立っていた。ねねのマスターだった。物腰がやわらかくいかにも水商売風の
空気を漂わせていた。
すいません。
彼は素直に謝った。店の一番奥の六人掛けのテーブルには既に女の客が三人すわっていた。
ちょっと後ろへ行って呼んで来ます。
と彼は言った。四人は常連の客だったので事情は察していた。
呼ばなくていいよ。時間かかってもいいからKさん作ってよ。
マスターが止めた。
俺はまだまだ修業中ですよ。お客様に出せるようなものは作れませんけど。
と申し訳ない気持ちで彼は答えた。
だ
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