人体実験/ただのみきや
 
のアパートの一室で小火があり





きみは

きみは風に舞い上がる古新聞
四散する記憶と記録であって
虹を駆け上り滑り落ちる自他の区別を失くした心音
きみはビルの屋上に捨てられた靴の中のオレンジ
身体の断面に一つの眼球を持ち
ゆっくりとだが正確にわたしを眼差す磁石
きみは香水瓶の中で溺れた蜘蛛
箪笥の中で下着に埋もれる香しい棺
互い違いに渦を巻く蝸牛の無限大に隠蔽された
ひとつの舌による両性の囀り
絶えず愛に枯渇して死に続ける池の魚
きみは白紙のまま投函された言葉の処女性を
感光させる疫病にも似た赤い涙の滴礼
汎神論と構造論で世界を紐解きながら
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