人体実験/ただのみきや
ら
それらの外に在る唯一絶対の眼差しに焼かれて
大理石よりも白い塩の柱
崩れる刹那の風の微笑
言葉の一元論で背中から刺し止められた
虹色の蠅の標本であり苦悩と悪夢のゆりかご
性器に擬態したウツボカズラ
祭壇の直前で谷底へ落下する美しい滝
白く長々と裂けてゆく花嫁に似た鎮魂歌
マトリョシカ
幸福は心に溶けるけど
不幸は溶けず固い層になる
どの年頃 どの層が語っても
その口は今の自分の口でしかない
万華鏡
記憶や苦痛の切れ端が
幾つか落ちているだけ
出口のないうつろな心
華などひとつもありません
虚像だけなら差し上げます
《2020年10月10日》
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