人体実験/ただのみきや
この国の秋は
鮮血の木の実の下 幻の金貨が揺れている
尽き果てて剥離した蜜蜂の痙攣
光と影の象嵌細工 夏へ支払ったものの釣銭
吹き矢を放つ子どもたち
戦慄く影は忠実に踏まれ続ける花
裏切りを特権とする本体とは違い
リボンを外して包み紙を剥がす
水耕栽培の根のように育った少女は
ワッフルを枕にして子宮の吃逆(しゃっくり)を数えていた
やがて不眠症の魚の水槽へと成長し
見つめる者の視線をすべて屈折させた
物事一つ一つは繋がりもなく別個の鍵を持っていた
一切の意味も疑問も必要ではなくただ鍵を挿して回す
社会は行為とその繰り返しを要
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