振り返ること?/道草次郎
か非常に深いもの、底光りをするようなものの存在を認めざるを得ない自分というものを直覚しながら、そして一方ではそれを全的に否定しつつ。
と、言いながらも日々は坦々と過ぎてゆき、やがてこのホームヘルパーという仕事にも限界を感じ始めたぼくは、そこから身を引くことを選んだわけだが、あの時の経験はいったい何だったのだろうと、時々、このようにして思い返すことがあるのだ。
少なくともぼくにとってあの経験は、ぼくの範疇を逸脱してはいない。何もかもが、独りで部屋にいた時と同じに、起こるように起こったのだと思う。ただひとつ言えるのは、感覚の鈍感な凡人にとって想像力を刺激するボタンを見つけるのは至難
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