振り返ること?/道草次郎
のだと思う。きっと彼女にはぼくが面白くなそうに見えたのだろう。その事を後になって車の中で責められたことがあった。その時ぼくはうまく弁解しなければこの関係がいよいよ面倒な方向へ行きかねないと思った。だからつい、自分が今携わっている仕事の深刻さを引き合いに出してある種の同情を乞うたのだ。ぼくは人の血と糞尿を拭いてきたばかりなんだ、という感じに。こうした事を平気に行う自分というものを睥睨しつつ、一時のはかない関係修復の為だけに取扱いに慎重を期すべき事柄を姑息にも利用したのである。少なくとも、ぼくはそういうふうに自分を見た。そういう自分を意識しながら、それをしたと思う。そういった経緯の一切の中にある何か非
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