庭の話など/道草次郎
 
のだ。

 もう一つ、とりたてて珍しい事ではないのだが、自分にとっては印象深い話を。
 ヤマボウシという樹がある。どうもこの樹にまつわる話は変わっていて、実のなるものは不吉だという言い伝えに端を発する。なぜそういう伝承があるのかその詳細に関しては不明である。ただ自分が覚えているのは、父にヤマボウシの白い花がきれいだと言うと決まっていつも、「あんまりよくない、不吉な花だから・・・」と話を濁された事である。それは何かこうモヤモヤしたしこりのような感情を幼心に残した。ヤマボウシは美しい白花を付けるのだが、不吉と言われるとなぜかその白さが少し青みを帯びてくるから不思議だった。言い伝えや伝承の類が事実
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