庭の話など/道草次郎
強壮なのは誰でも知っている。父は花木の珍種をことに好んだ。なかなか人が育てない樹を手に入れてきて、それを育て上げることに喜びを感じているような所があった。だから当然その父が居なくなり、面倒を見る者がなくなればそれらの珍種が朽ちるのは時間の問題だった。ものの数年で殆どが病気をわずらうようになり、十年を過てからは倒木はざらだった。
しかし、なかには強いものもあるにはある。
例えば棗(なつめ)の樹である。これを人家の庭に普通に植えることがよくあるのかは知らないが、この樹はじつにたくさんの棘を持っている。それはそれは恐ろしく尖った棘である。これは自分の思い込みかも知れないが、前年に剪定を
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