庭の話など/道草次郎
 
定を施された樹は必ずと言っていい程かかる年の棘を増やしてくる。それどころか棘は前より鋭くなっている。とは言えこの樹は木質がしっかりとしていて成長も逞しいので、枝を落とす必要はどうしても生じる。よって、毎年大変痛い思いをしなければならなくなる。しかも、年々棘の脅威は増すのだ。病気にも十全な抗体があるらしく、秋には臙脂(えんじ)色の熟れた実をふんだんに落とす。その樹の枝々を剪定するのは、どことなく、縫い針だらけのクリスマスツリーの飾り付けでもしている様な気分だった。そういうじつに恐ろしい樹だけは、憎まれっ子世に憚るではないが、負けずに生き残っているというそんな話である。

 それから、ブナ、
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