庭の話など/道草次郎
本当に植物に詳しかった。そして、植物を愛していた。行きつけの植木屋では半分冗談で先生と呼ばれ、会社でも植物博士で通っていたらしい。そんな父を見て思春期を過ごした自分は、父のやっていた事を何となくただ見ていただけであった。やがて父が世を去り、一人暮らしをする為に自分が家を離れてしまうと庭はみるみる内に荒廃していった。致し方ない事ではあったが、それは情けないことでもあった。
我が家の庭の真ん中には、シンボルツリーとして、花の木という名の大樹が鎮座していた。とある大風が吹いた日の未明の事である。根方から二股に分かれているうちの一方が、予てよりひどく朽ちていた洞の脆弱さに耐え切れずに、一気にドッス
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