庭の話など/道草次郎
 
物図鑑だけは手放せない様だった。それだけ好きだったのだと思う。
 元気だった頃は、夜も明け切らぬうちから林檎と葡萄の消毒と草刈りを済ませ出勤。帰宅してからは何時間もかけて水やりをして雑用もこなす。そんな生活を当たり前のように何十年も続けていた。家庭状況その他の事情は違えど、自分には到底できない事と今になり振り返れば思う。

 父に似てきたというのは、見た目云々に関しては言うまでもなく、その好むところが似通ってきたという意味でもある。食い物然り、読む本然り、母に言わせれば一寸した拍子にする返事然りである。しかし、もっとも自覚するのは、先ほども触れた通り植物への関心についてである。
 父は本当
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