庭の話など/道草次郎
 
 歳を取り年々感じるのは、死んだ父にますます自分が似てきたという事だ。父は自分が十七の時に他界した。享年五十八。逝ったのは冬のおそろしく寒い夜更けの事だった。その時のことは今も鮮明に覚えている。
 何といっても植物が好きな人だった。ことのほか花木を愛しており、実家の庭には種々の珍しい花木と見たこともない花々が植えられていた。それらの大半は現在も残存しているのだが、自分には、その名前すらよく判らない樹や花も少なくはない。
 父が入院していたとき、いつもその枕頭には植物図鑑があった。元来恐るべき蔵書家で、またそういう方面の仕事を生業にしていた手前他に幾らでも読みたい本はあっただろうに、何故か植物図
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