詩と音楽と酒/ただのみきや
一緒に
呼び込みの懐かしさに片頬を膨らませ
得難い哀切に一切を明け渡しながら
売上を盗って夜逃げした男は
パチンコ玉に打たれて倒木に戻り
在るはずもない目を開こうと
その節くれで虚空に触れた
豊満な虚空だった
そこはかとなく
罰するように慈しみ
訪れるように迎えてくれる
天秤にかけて値積もりし
どこかへ売り払う
くすんだ夏色の服を脱ごうとしない
異物の種子として
わたしは愛された
捉えどころのないものに飼われ
花嫁のように
裏切りながら妥協する
*今も昔と俺は言う
泣き腫らした心が胸からはみ出した
可愛げのない仏頂面の大人たち
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