詩と音楽と酒/ただのみきや
オンが眺めている
目も耳も鼻も半開き 風上に思いを馳せ
たぶん地球を何周もしながら
羚羊や縞馬の味を反芻しているのだろう
フランス料理 アラブ料理 四川料理
金色の産毛を風の愛撫に任せながら
スパークリングワインをラッパ飲みしている
ベランダから眺めているメスライオンは
人間のちょっといい女に似ている
愛人
くすんだ夏色の服を着たまま
「秋の不在」と書かれた芝居の小屋へ
薄曇りの脳髄と霞の胸に取り込まれ
目覚めと夢の走馬燈
それでも未だ異物としての見世物小屋
くすんだ夏色の人魚となり
ワンピースの裾を靡かせている
矮人や蛇娘たちと一緒
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