秋耕と幻想/道草次郎
 
乱な気持ちとなり、目の前がすこし昏くなったようにも感じられました。得体の知れない不安に駆られ、意味もなく窓をあけると、そこには一羽の鶴がいるではありませんか。おそらくは田圃の水場辺りで捕らえたであろう川魚など咥え、毅然そして凝然とこちらを見ているのです、とこれは勿論、創作です・・・もう夜も八時過ぎです。汗のさめたうらなりには、創意に託するしかない時もあるのです。また、丁度そんな刻限でもありましょう。

 さて、こうしていれば、自分はこのまま何処へいくのだろうと思われて来ます。鶴に殺された想像の自分の骸が、からからと骨の音をたてながら眼前に漂ってくる様でもありますし、或いは、別段どうということも
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