熟れた悪意の日々/ただのみきや
て
すべて砂塵 賛辞も批判も
埋もれて往くだけの木乃伊を
誰が発掘する? ましてや真水で戻す者など
それでも茫漠幽玄三千世界とまだ嘯いて
御椀の舟に箸の櫂――ただ内へ
内へ飲まれる渦潮地獄
聖母
男は今も母親と臍の緒で繋がっていた
捏造された記憶では
母はラファエロのマリヤに似た娼婦で
愛情深い甲斐性無しだった
もうずっと前にもらった
吊るしっぱなしの花束が
唯一微かに美の面影を残していた
日の入らない部屋の鏡台の中から
下着姿で微笑んでいる
男は今も母親と臍の緒で繋がっていた
ショットガンを咥えて
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