死と詩と虫と/ただのみきや
言われぬ喪失の違和を日向に持て余し――
確かにあれは姉だった
いったい誰の姉だったのか
小箱
車の中で聴く雨音
ざわめきの覆うしじま
寄木細工の小箱の中
綿に包んだ臍の緒と乳歯
そっと訪ねた指先に
微かに響いて来るもの
開いてみれば
蠢き埋め尽くすマイマイカブリ
ああ雨に濡れた墓石
大気に溶けだす柳の緑
体も壊すほど
悲哀を愛している
まじない
そっとハンカチに包んで
死んだ揚羽蝶を持ち帰ります
メルヘンでも感傷でもありません
これは一種の呪術
過去が呪う未来のため
未来が誘う過去のため
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