死と詩と虫と/ただのみきや
て孵らぬ卵たち
荒地に芽吹く淡いもの
抜け落ちた鳥の羽根を運ぶ
一匹の蟻が風に誘われる
還らぬものを想い
ひとり胸に刺す千人針
骨を拾う記憶の灼熱
寝息のように甘いもの
秋を装う感傷は通り魔
姉弟
蟋蟀(こおろぎ)が鳴く朝
死んだ姉の衣装ケースから風が髪を乱しながら
畳の縁を踏まないように 床の間の前で折れて
部屋を出ていった
庭の隅 こんもり繁ったあの紫蘇の辺り
太陽の下の蟋蟀は死者の囁き
風をまとって姉は吹き抜けた
わたしは術もなく
蛞蝓(なめくじ)とその這ったぬめりに目を向けながら何も見ずに
得も言わ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)