あなたの心が今ある運命を受け入れられず、これから来る悲劇をも自分で決められないことに絶望したなら。/竜門勇気
 
なざまにならなかったのか?
低く声がする。「すぐいく」5分後もう一度電話を掛ける。一週間眠り続けた父に、これからも眠り続ける父に声を聞かせるために。

父は死んだ。
その日のうちにあちこちに電話した。
父の意向で沢山の人が突然の訃報を聞く羽目になった。
葬儀に来た上司に「明日は出社します。」と言った。少し慌てた顔で「何言ってるんだ、一週間は最低でも休みなさい。」と返された。
僕の社会経験は薄っぺらでこれからどれだけ忙しいか分かっていなかったのだった。
香典返し、相続、親戚づきあい。親戚が去ったあとの静かな夜。父が持っていたアパートメントの莫大なローンの引き継ぎ。
これからも伸び続
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