朝 (他六篇)/道草次郎
を委ねるのは
言葉の網から
逃れ続けている
から
かもしれない
「サルスベリと季節について歩きながら考えたこと」
たしかにサルスベリは
猿が登ろうにも
ツルツルと滑ってしまいそうな
樹皮に被われている
一昨年
庭のサルスベリの
そのツルツルした部分に
カイガラムシがたくさん付いたことがある
恥ずかしいことに
ずっと
カイガラムシというものを
どこか昆虫というよりも
病痕のように漠然と思っていて
かいがらに見たてられる
その貝殻状の白い被覆物を潰すと出る
あの赤い汁を
なぜかそれに触れてはならない病液のように思っていた
しかしその赤い液体
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