下山/山人
 
独と戦う」わけでもなく、体力に余力がある限り刈り続けるというマシンのような心境だ。目の前の大石に刃を当てないように。目の前の枝を刈り、次から次へと刈り進んでいくマシンを自覚することで作業は進んでいく。
 午後二時前、山頂に着いた。○○岳の除草は終わったのだった。ガスで回りは視界がなく、山頂付近の道標や三角点だけが際立っている。「山頂ひとり占め」という言葉があるが、その感慨に浸るほど艶やかな景色もなく、乳白色の世界だけの存在に心は何も反応しない。しかし、それがかえっておだやかな気持ちにさせてくれる。
 誰も居なかったら山頂で自撮りをしようと考えていた。それにしても年を取るとひどい顔になるもので、
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