夭折/ただのみきや
 
桜の若木よ
そのやわらかな葉は
薄曇りの日差しにも透けて産毛のよう
握れるほどの細い幹も
椅子とテーブルで育てられた
少女の脚よりも真っすぐしなやかだ
公園の日当たりの良い所
太く逞しい添え木に支えられながら
やがて雪に覆われ冬を越え
次の春には幾つかの
淡い花弁を灯すだろうか
添え木に止まった小雀となにやらあどけなく
戯れて 色と香りと囀りを
うらうらと滲ませながら
愛でる者など居ようと居まいと
無邪気にただ切実に





おとぎ話

雨音を浴び続け酸っぱい靄が出た
小鳥の根が心臓に絡まったまま
死化粧をした月のよう 弟は
魚のオカリナ
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