いずれすべては跡形もなくなってしまうけれど/ホロウ・シカエルボク
 
生き続けたけれど…そんな母親も記憶を失くそうとしている、もうすぐふたりの人生はなかったことになるだろう、残された子供らの話はしないことにしよう、三匹の子豚の話よりもつまらなく、どこにも救いがない、俺は言葉にしがみついた、だから少しはまともな人生を生きることが出来ている、人生は一匹の蝶々が見る夢かもしれない、だからって虫のように生きることは出来ない、簡単なことだろ?いま、ふたつの目玉は俺のそれに重なろうとしているかのようにこちらににじり寄って覗き込んでいる、黒目がずれているせいでなにを見ようとしているのか分からない、俺は苦笑する、それはつまり俺の目なのだ、何度も何度も、俺と言葉を交わした誰かがこんな
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