李家の人々/ただのみきや
 

薔薇色の未来が微笑んでいる





近親相姦

昨日に包まって酸欠し
静脈色の「た…け…」が睫毛の間に溺れている
少年の膝小僧に釘を打つ
少女は長襦袢を引きずりながら母へと変わって往く
金の産毛から「こ…し…」の甘い匂い

黎明の雄鶏 透き通った波
卵が割れ太陽は落下
大地は大地を飲み込んで往く
十二時の針の逢瀬
二体の胎児はひとつの陰陽図となって子宮を編む
蝉の抜け殻の大群が風にカサコソ
時間の断面をいつまでも横切っていた

母が新たに完成すると
双子は再び生まれ出た
夏が侵入する
死者たちを引き連れて網戸から
そうして皮膚から呼吸
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