李家の人々/ただのみきや
傷
抗わず流されず
風と折り合いつけながら
トンボたちは何処へ往く
銀の小さな傷のよう
翅で光を散らしながら
白紙のこころ
尖った波に足を取られることもなく
風は駆ける
翼のある脚
渦巻く大蛇
広大な羽衣へと姿を変えながら
矢のように放たれた叫びが
遥かなあの島へと届く前
虚空の胸中に捕らえると
無数の唖の口形
鯉のように食んでは食んで
生皮を剥がされた こころは
鴎たちの傾く白い交差の中を
赤錆びた係船柱の陰で囁くフナムシの上を
陽炎の中では陽炎をまとい
雨に穿たれて
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