足音が聞こえないやつこそがいちばん長い距離を歩いている/ホロウ・シカエルボク
 
薄暗がりの回廊の中を
まだ覗いていないドアを探して歩き続けているのさ
それはきっと見つけ出すものに意味があるのではなくて
見つけ出そうとしている行為にこそ
理由というものが隠れているんだ
俺はそれを見つけ出したことがない
見つけ出すつもりもない
それは道路標識みたいなもので
目にしたところで「ああ、そうなんだ」で終わるものだから
だからこうしていつまでも続いているんだ
その日語るべきすべてを語るから
一見は無意味な羅列に過ぎなくても
なにかを残せた気がして
気分で始めてしまうのさ
いま、水を飲んできたんだ
丈夫な廃墟みたいな俺の家の給水管は剥き出しで家の壁に張りついて
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