残熱/道草次郎
 
した。ぼくの体調不良はすでに周知のことだったのでパートナーはしきりにぼくの身体を心配していた。そしてぼくがなんで難しい言葉をよく知っているのかがこれでよくわかったと言った。本が好きなんだね、と。


ぼくはドキマギしてしまい、「はい」とか「そうです」とかしか言えなくて半分うつむいたままだった。すると、パートナーは去り際にぼくに向かってこう言った。「悩んでることあったらなんでも言いなよ。何だって聞くんだから」


古本屋の前に取り残されたぼくは去りゆくかつてのパートナーの後ろ姿をいつまでも眺めていた。


その時、ぼくの意識は鳶が舞う遥かな空の高みを求めたがった。だが、けっきょくは
[次のページ]
戻る   Point(2)