朝食へ至る/道草次郎
味噌汁を掻き混ぜていると渦運動のさ中に黒色の欠片が俄に散見された
葱の二又に分節する箇所に身を隠していた微塊な土くれか
或いは湿地の石突きの紛れ込みか
それを判別する有効な手立ては持ち得ないのだが
背後で沸々と炊き上がる白米
胚乳と呼ばれる稲を稲たらしめる為の栄養素の塊は
蓋下の闇にあって爛々とその身を躍らせている
菜種油の上に波打つベーコンに半身を擡げる卵黄のかすかな震えに
菜箸は一瞬躊躇ってしまう
そうして遠慮勝ちに為されるテフロン加工底面への小刻みな数撃
柔らか過ぎるナイロンに包まれた危うい板海苔たち
醤油は浅漬けとともに無言のまま移送され
卓袱台上にて杳
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