延長戦/ただのみきや
一人でベースの弾き語りもやっていた
客は五十を超えたわたしより一回りも上の人ばかり
男も女も音楽など聴いているのかいないのか
酒を飲んで大声で話していた
わたしもまた毎回帰り道で倒れるくらい飲んで
趣味の合わない音楽でも嬉々として踊っていた
店は閉店したがまだ佇まいだけは残っている
常連は死んだが自主製作のCDは残っている
政党の旗は相変わらず踊っている
わたしに担ぐ旗はない
わたしの風は酒と音楽だ
政治の風じゃあ踊れやしない
なにも残さず死ぬ
おそらくそんな人間だ
誰にとっても行きずりの
消しゴム
ふと消しゴムを想う
――書か
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)