予兆 ―プロフェシー―/岡部淳太郎
 
等の間に決定的な差異があるわけでもなかった。だから、彼等と比して人々を下に見るなどということが許されるはずもなかった。人々はただ、恐れに脅えて自らの弱さを見ようとしないだけであった。彼等は人々よりも自らの弱さに自覚的なだけであって、同じように弱い人間であるということに変りはなかったのだ。
 それにしても、予兆とは何だろうか。彼等は宇宙から絶え間なく降り注ぐ粒子か何かを感じ取ってでもいるのだろうか。彼等のうちのある者はそれを絵に描き、別のある者は言葉に書いた。しかし、それが理解されることはほとんどなかった。彼等が自らが感じた予兆にしたがって作り上げたそれはこの期に及んでも人々には理解されず、彼等は
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