父親/道草次郎
 
投げかけた。
それには何も答えず父親はもうしばらく自分でなんとかしようと頑張っていた。しかし、赤ん坊の泣き方はいよいよ本格的になってきた。
見兼ねた母親が部屋に入ってきて、父親の手から赤ん坊を引き受けた。しばらくすると赤ん坊は落ち着き始めた。
「おっぱいかも。ちょっとあげるね、適当に対応してて」と母親は父親に耳打ちした。

キッチンへのドアを開けると、二人はちょうどアルバムか何かを見ているところだった。
父親は何を言っていいか分からず、「ミッキーの歌をうたうと泣き止むんです。でも、今はどうも違ったみたいで」と笑った。
父親の顔には意味ありげな、それでいて独言のような含み笑
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