父親/道草次郎
 
誰似でもいいんじゃない?」妹は少し自信なさげにそう言った。

いつの間にか父親は息を潜めていた。
義理の家族が交わすとりとめもない会話に耳を向けながら、じっと何かを耐えるような体勢で赤ん坊の傍に座っていた。
赤ん坊がえずく仕草をしたので、父親はすぐに抱き上げ、お尻を軽くポンポンと叩いた。それから、部屋をゆっくりとリズミカルに周回しはじめた。
ステラ・ルーという名のウサギのぬいぐるみや干してある小さな靴下たちに、「ほら挨拶して」と呼びかけても赤ん坊の機嫌はなかなか良くならなかった。

キッチンからふたたび話し声が聴こえてきた。
「お宮参りの着物、あの袋に入ってるからね。それ
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