父親/道草次郎
で体をびくりとさせた。それを見た父親はニコリと笑い、赤ん坊のほおを親指の腹でやさしく押した。焦点の合っていないであろうその目を、赤ん坊はクリクリと動かした。軽く「ウっ」という声を出し、天井の方のどこかを見ていた。
キッチンの方から、母親と母親の妹、祖母の話し声が聴こえてきた。
「誰に似てる?あの目はやっぱりお姉ちゃん?」と妹は言った。
祖母は悪い左膝を庇うように狭い椅子に腰を下ろして言った。「そうね、あの目はお母さん似ね。でも、おじさんにも似てるから、やっぱりこちらの系統かね」
「パパに似てるって助産師さんは言ってたよ」と母親は言った。
「言われてみればそうかも。でも、誰似
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