野菜雑感/道草次郎
の静けさの中で黙々と行われる殺戮は、それはあまりにも謐かではあった。
野菜を育てていると、野菜はひとりでに育っていくということしか感じない。草を刈って風通しを良くしたり、水をくれて枯れないようにしたり、そんなことは、じつは人間のほんの少しの都合の為で、長い目で見れば野菜は勝手気ままに育っていく。そんな野菜の生き方を虫も鳥も知っていて、舞い降りてはその種を拝借していくし這っては気分次第にその葉の形を変えていく。
何が起きても野菜はじつにあっけらかんとしていて、枯れてしまうものは枯れてしまうし、失われたものは失われたまま、そのままだ。やがて何もかもが土に還りまた新しい芽を吹かせること
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