夜の始まりに甘いケーキを/ホロウ・シカエルボク
角を曲がって来た薄汚れた中型犬が俺に気づいて立ち止まる、そいつは冷たい目で俺をじっと見定める、殺せる相手かどうか考えているのか?いや、そいつは威嚇音すら発してはいない、きっと、そういう段階はもう過ぎてしまったのだろう、(どうしてこんなところを歩いているのだろう?)もしも訊けるものならそんなことを訊いてみたいと考えているみたいに見える、ふう、と濡れた鼻から小さな息を抜いて奴は俺の進行方向へと歩みを進めていく、そいつの歩調を乱さないように俺は充分なインターバルを取って歩き出す、あっという間に目視出来る距離ではなくなってしまったけれど、そいつは時々立ち止まってこちらを振り返っている、俺にはそれが分かる、
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