フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
してもがきはしない
万物は法則に殉じる安らかな怠けもの
白いケーキのクリームを泳ぎ切りキュビズムのような苺を目指せ
どこまでも理想を追求して模倣に近づいた実物
純粋な感覚故に死を覚悟しろ
その果肉と果汁の甘さ酸っぱさに開かれ過ぎて
魂は既発するだろう
宇宙空間の紙芝居のト書きに過ぎなくなっても
スペードのクイーンの運命とカードを捌く男の思惑とゲームを支配する
不動のルールとそれすら犯すイカサマがヒンズー教徒の神話のように
新鮮な残酷さで日々をモールで飾ってくれる
真実と言い張るための粉飾に窒息しかけた肺魚のような足どりで
仕事に出かけて往く人々
種の中にリンゴがあるのなら
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