夢幻の話/道草次郎
汀でしばし佇んだ数秒間の、幻のようなあの時間の意味は?本当にそれは安定を寿ぎ、その為の行動を自分に取らせるようと宇宙が仕向けた何かだったのだろうか。それとも、ただそれがそうであることの中に既にしてそうであることの萌芽を宿している何かなのか。若しくは、率爾として高峰が大気層に屹立するかの如きに、或いはブラックホールが刹那にして銀河バルジの内奥で一挙蒸発するかのようにそれは起こっただけなのか。寧ろ起こってはいないのか。あるいはそのどちらでもない中立均衡状態が本当か。あらゆる確率と数列と幾何学が地虫の蠕動のリズムに非線形グラフを見出すように、死んだキリンの腐肉を分解する微生物群の統合されたゲシュタルトが
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