記憶から/道草次郎
 
いていた。だから、子供ながらにもT君とは一定の距離を保とうとしていた記憶がある。


Tくんは同じ町の不良と呼ばれるような子と付き合っていた。その子がBB弾で猫や犬をいじめた事がPTAで問題になった時などには、T君もそれに加担したのではないかという疑惑が持ち上がった事もある。そうした経緯を知っていたからか、子供の頃のぼくはT君に対してどこか恐いイメージを持っていた。



二十六歳の頃、ぼくは社会の何もかもが怖くて実家に半分引きこもっていた。そんなある日、大人になったT君が突然家にやってきた事があった。T君はお父さんの家業である土木工事の手伝いをしており、その日
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