Terminal Frost/ホロウ・シカエルボク
 
然さはなにも見つからなかった、トイレを開けて、便器の奥まで覗き込んでみた、細切れにした死体を流したような形跡はなかった、ベランダに出て、血痕も肉片も見つけられなかった、ということは、他人の血でもないということだ―動物?動物の血という可能性はあるだろうか?あるいは血糊とか―?そもそも血ですらないという可能性はないだろうか、絵具や、ペンキ…顔料とか、マジック―けれど、それは本物の血で書かれたものだとしか思えなかった、だとすれば、それが本当は血で書かれたものなのだということを俺自身は知っているのだということだった、いつのことだろう…壁に顔を寄せてじっくりと眺めてみたが、なにも思い出せなかった、自分の字に
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