8月14日。未日記/道草次郎
 
笑む赤ん坊という風なのだ。しかも内装だってしょっちゅう変わる。ドアを開ける度に違う部屋に来てしまったいう錯覚に陥るが、この部屋はたしかに無意識の部屋である。この部屋では殺人事件は日常茶飯事だし、精通や初潮もひっきりなしに起こる。ここでは優しさがじつは憎しみだし、親切が充分トラウマとなり得る。虚しいという叫びは手淫への屈折した導きだし、愛し合う恋びとたちの囁きは母親への悔悟を伴っている。戦争と日常と残酷と幸福が共存しながらもその部屋ではそれら全てが1人の赤ん坊の排泄物の中に存在している。赤ん坊もまた、次の瞬間には末期のカリエス患者にもなり得るし、臭気は香気であり、虚無はすなわち涅槃である。


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