エメラルドグリーンの流れとねずみ大根と女郎蜘蛛の話/道草次郎
 
そうだね。まあ、そうすればいいんじゃない」とつぶやいた。見えなかったが軽く貧乏ゆすりをしているような気がした。
その無表情な顔がバックミラー越しに目に飛びこんでくるや否や、ぼくの胸は喉に刃を突き立てられた獣のような悲鳴を上げた。心は音の無いしかし激しい不安に襲われた。やがて苛立ちがそれにとって変わると、ぼくは自分でも愚かだと思いながらもしつこく蜘蛛の話を繰り返していた。
「俺はね、たしかにそうだよ。虫を殺したくないわけじゃ全然ないんだ。ただ虫が潰れるのが気持ち悪いだけだ。ぐちゃっとした何かが飛び出したりするのなんて見たくもない。俺は、べつに善人じゃない。やつらを殺す勇気もない人間だ。俺
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