エメラルドグリーンの流れとねずみ大根と女郎蜘蛛の話/道草次郎
した。「『手のひらに太陽を』だよ。かの有名なやなせたかし先生の作詞だぞ。そんな歌、俺うたってたかあ?」
「うん、歌ってた。絶対に。にしても…なんで殺さないわけ?蜘蛛はこわい生き物だよ?」
待ってましたとばかりにぼくは反撃に出る。手に持つハンドルにも力が入る。
「蜘蛛は益虫なんだぞ。やつらは人間に害をなす別のひどい虫たちをせっせと駆除してくれているんだ。それに、無闇な殺生はいけないことだよ」
妻も負けじと食い下がってくる。とうにトンネルを抜けた車は木漏れ陽が降りそそぐ一直線の道路を走っていた。
「だって、キモいものはキモいの。嫌だから殺してって言ってるのになんで
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