エメラルドグリーンの流れとねずみ大根と女郎蜘蛛の話/道草次郎
妻がこの話に反応した気配を感じたぼくは、いよいよ話を針小棒大なものにしていく。
「あの膨らんださ、斑の腹がさ、割れたかと思うと白くて粘っこい粘液みたいなものに紛れてわっと一斉に出てきたのが…」
「ほんとやめて。お願いだから」妻は心底うんざりしたように目をつむると、すでに耳を塞ぎかけているところだった。
ぼくは少し弱気になって、「わかったよ。でもさ、こないだ家のベランダでもあの蜘蛛出たじゃん、覚えてる?」と言うと、様子を窺うためしばらくのあいだ沈黙することにした。
トンネルに入りあたり一面が暗くなる。オレンジ色のライトが緩やかなカーブを描きつつどこまでも果てしなく続いていた。
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