手探りで/ふるる
 
ニールカバーは破れて飛んでいった
最後にかけたのはどれだったのか
中身がないものや
ジャケットと違うレコードが入っていたり
立派な黒くてつやつやした円盤に
刻んであるのは若き叔父の姿
拗ねたように首を曲げて
下を見ている
猫背の人から漂うのは拒絶
話しかけてもらえる期待と絶望感
会話はあまりしなかった
聞けば何でも答えてくれた
半分しか理解できなかったけれど
ガイネンという言葉を初めて知った
質問の仕方がよければ
質問者は答えに近づいている
質問にも色々あってね
ふっとそれまでの空気と世界が途切れ
世界も自分も何度でも塗り替えられる
そう言った顔は思い出せない
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