夏の囚われ人/ただのみきや
ホ長調
水底の拍手音
結び解(ほど)ける翅 翅 翅……
レモン水の氷は消えた
わたしを閉じ込めた
あの夏は何処へも往けはない
秋桜
有無を言わせず風は強まり
濃いも薄いも純白も みな
いっせいにうなじを向ける
なよやかに踏みとどまって
小鳥とわたし
グラウンドを囲んだ高いネットで
雀たちは戯れる
たやすく止まりくぐり抜け
風によく似た遊び 囀りを交わしながら
泳いだことのない空の深さに溺れ
不可視の網を越えられず
囀ることは理屈ばかり
この胸にいくつ小鳥を埋めただろう
グラウンドを
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